公的医療保険制度でカバーできる範囲とカバーできない範囲

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公的医療保険制度は、私たちの生活において重要な役割を果たしています。しかし、公的医療保険だけではカバーしきれない部分も多く、民間の医療保険の活用が求められることがあります。

本記事では、まず公的医療保険の概要を理解し、その保障範囲とカバーしない範囲について詳しく解説します。さらに、民間の医療保険に加入する際の目的を明確にし、どのような保障が必要かを具体的に考える方法を紹介します。

■公的医療保険の概要を理解しよう

公的医療保険にはいくつかの種類があり、多くの人が全国健康保険協会(協会けんぽ)や市町村が運営する国民健康保険に加入しています。公務員の方は共済組合、大手企業にお勤めの方は企業の健康保険組合に加入していることが一般的です。

どの保険証を使っても、診察や医療処置、手術、薬などの費用に対して、小学生から70歳未満の方は3割負担となります。また、高額療養費制度により、患者やその家族が支払う限度額が設定されているなど医療行為や治療行為に対する保障内容は概ね同じです。

協会けんぽや企業の健康保険組合の場合、1人分の保険料で扶養家族の保険もカバーできたり、傷病手当金や出産手当金として1日あたり標準報酬日額の3分の2相当が支給されるなどの特徴があります。これらの特徴は、国民健康保険には備わっていないため、国民健康保険よりも協会けんぽや健康保険組合の方が手厚い保障を受けることができます。

■公的医療保険制度でカバーできる範囲とカバーできない範囲

公的医療保険制度は、風邪や骨折などの一般的な病気や怪我に対して保険証を提示することで医療費が軽減される仕組みです。しかし、美容整形などの美容目的の治療には保険が適用されないことが一般的です。故に美容目的の治療は全て保険適用外と思っている方も多いのではないでしょうか。実は、保険適用できるものも存在するのです。

保険が適用される場合
ワキガ

他人に不快を与える程度のワキガの場合、保険が適用されることがあります。

シミ・アザ

太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着症などのシミやアザも、医師が必要と認めた場合に保険が適用されます。

保険が適用されない場合
近視矯正手術

近視を改善するための手術(レーシックなど)は保険適用外です。

正常な出産

正常な分娩は保険適用外で、自費診療となります。

診断書作成代

診断書の作成費用も保険適用外です。

差額ベッド代

入院時の病室が4床以下など一定の条件が揃った場合の部屋代は保険適用外です。

先進医療の治療費

先進医療の技術料は保険適用外で、全額自己負担となります。

入院時の食事代

入院時の食事代は、平成28年度からは360円、平成30年度からは460円に上がり、令和6年6月1日からは490円となります。640円のうち380円が公的医療保険で賄われるため、自己負担分は260円です。

このように、美容目的であっても保険適用となったり、治療目的であっても保険適用外となることがあります。

■あなたに必要な入院日額は?

ほとんどの医療行為や治療行為は公的医療保険の適用となっているにも関わらず、日本人の大半は民間の医療保険に加入しています。もし、何も考えずに入院日額等を決めてしまったのであれば、これを機に見直してみましょう。

見直すポイントは、まず自分が入院した場合の生活を具体的にイメージしてみることです。例えば、プライバシーを重視するなら個室を希望するかもしれませんし、費用を抑えたいなら大部屋でも問題ないかもしれません。これにより、差額ベッド代が必要かどうかが見えてきます。

また、入院中の生活費も考慮しましょう。例えば、家族が自炊できない場合、外食が増えて食費が高くなるかもしれません。さらに、クリーニング代やお子さんの保育料など、普段は発生しない費用がかかることもあります。こうした具体的な状況を想像することで、どの程度の保障が必要かを見極めることができます。

さらに、収入の減少にも備える必要があります。例えば、家計を支える人が入院した場合、傷病手当金を受け取ったとしても収入が減ることになります。これにより、家計に不安を抱えるかもしれません。こうした状況にも備えることが重要です。

民間の医療保険に加入する際には、自分や家族の生活スタイルや経済状況を具体的にイメージし、必要な保障内容を明確にすることが大切です。これにより、無駄のない保険選びができ、安心して生活を送ることができます。

おわりに

いかがでしたか? 医療保険についての理解が深まりましたでしょうか。公的医療保険でカバーできる範囲が分かると民間の医療保険に対する考え方が少し変わってくるのではないでしょうか。それぞれの保障内容を把握することで、より安心して生活を送るための準備が整います。自分や家族に最適な保険を選び、将来に備えましょう。

【参考資料】
協会けんぽ『保険証を提示して治療を受けるとき(療養の給付)
協会けんぽ『入院時食事療養費

執筆者:鍛治田祐子

■ファイナンシャルプランナー

【保有資格】CFP®認定者 1級ファイナンシャルプランニング技能士

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