レモネードで分かる!『損金と費用』『益金と収益』『利益と法人所得』

ビジネス

会社の経理や税務の話は難しいと感じるかもしれません。読者の皆様に少しでも分かりやすく伝えるため、今回は、レモネードの例を使って “損金と費用” “益金と収益” “利益と法人所得” の違いを解説します。

■誰が目を光らせているかで名前が変わる

会社の利益や収益・費用は、誰が注目しているかによって名前が変わります。

“収益から費用を差し引いた利益” は、株主や経営者が注目しています。
利益が多ければ、配当金が増えたり、株価が上がったりするためです。

一方、”益金から損金を差し引いた法人所得” は、税務署が注目しています。
法人所得は会社が支払うべき税金の基準となるため、税務署は税法に則った正確な計算を求めます。

たとえば、会社がレモネードを売って100円の収益を得て、材料費やその他の費用が100円かかった場合、利益は0円です。しかし、税法では特定の費用が損金として認められなかったり、特別なお金を手にしたとして益金が加えられたりすることがあります。仮に、接待交際費の一部が認められなかった場合、税法上の費用は80円となり、税法上の所得は20円となります。このように、会計上の数字と税法上の数字は異なることがあります。

“収益” “費用” “利益” という単語は、主に会計上の言葉で、会社の日常的な経済活動を反映しているのに対し、”益金” “損金” “所得” という単語は、主に税法上の言葉で、特別なルールに基づいて調整されるという違いがあります。

“利益は無いのに所得はある”ってどういう状況?

税法では、接待交際費の損金算入には制限があります。例えば、資本金が1億円以下の会社の場合、以下のいずれかの金額が損金として認められます。

  • 年間800万円までの接待交際費の全額
  • (年間800万円を超えると)接待交際費の50%。

資本金が1億円を超えた場合は、年間の制限なく接待交際費は50%しか損金に算入できません。

資本金1,000万円のレモネード会社の場合

あるところに、資本金1,000万円のレモネード会社がありました。そして、その年度の接待交際費はまだ800万円に達していません。ある日、この会社はレモネードを売って100,000円を稼ぎました。材料費やその他の費用として90,000円かかり、さらに接待交際費として10,000円、会議費として5,000円を支払いました。

この場合、会計上の処理は次のようになります。

  • 収益: 100,000円
  • 費用: 50,000円(材料費) + 10,000円(接待交際費) + 5,000円(会議費) = 65,000円
  • 利益: 100,000円 – 65,000円 = 35,000円

そして、税法上の処理は次のようになります。

  • 収益: 100,000円
  • 損金: 50,000円(材料費) + 10,000円(接待交際費の全額) + 5,000円(会議費) = 65,000円
  • この日の所得: 100,000円 – 65,000円 = 35,000円

この会社の場合は、利益=所得という結果になりました。

資本金1億円超のレモネード会社の場合

レモネードの売れ行きが好調で、この会社は増資することを決定し、資本金1億円超になりました。

そんなある日、いつものようにレモネードを売って100,000円を稼ぎました。材料費やその他の費用として90,000円かかり、さらに接待交際費として10,000円、会議費として5,000円を支払いました。

この場合、会計上の処理は次のようになります。

  • 収益: 100,000円
  • 費用: 50,000円(材料費) + 10,000円(接待交際費) + 5,000円(会議費) = 65,000円
  • 利益: 100,000円 – 65,000円 = 35,000円

しかし、税法上の処理は次のようになります。

  • 収益: 100,000円
  • 損金: 50,000円(材料費) + 5,000円(接待交際費の半額) + 5,000円(会議費) = 60,000円
  • この日の所得: 100,000円 – 60,000円 = 40,000円

資本金が1億円を超えたため、税法上この日の接待交際費は半分しか認められず、利益≠所得という結果になりました。

法人保険の損金

法人保険の保険料は、税法上のルールに基づいて損金として認められる場合があります。

例えば、従業員の健康保険料は全額損金として認められます。つまり、会社が支払った保険料は全額費用として計上され、税金を計算する際に所得から引かれます。

一方、経営者の退職金準備のための保険料は、一定の条件を満たす場合に損金として認められます。例えば、保険期間や保険金額などの条件があります。このように、法人保険における損金は、税法のルールに基づいて決まります。

▼法人保険における損金のルールについて詳しく知りたい方はこちら
2019年改正の長期平準定期保険の仕訳

おわりに

いかがでしたか? この記事を通じて、損金と費用、益金と収益、利益と法人所得の違いについて理解が深まったでしょうか。会計と税法の違いや、利益がないのに所得があるケースについても触れました。これからも経理や税務の基本をしっかりと学び、実務に役立ててください。

執筆者:鍛治田祐子

■ファイナンシャルプランナー

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