なぜ債券利回りが上がると株価は下がるのか

マネー

今回は米株式相場の下落が続いていることを受けて、”米国株下落の概要”と”債券利回りと株価の関係”をまとめてみました。

米国株下落の概要

今朝(2020/09/09)の日経新聞で次のような記事がありました。

8日の米株式相場は大幅続落した。ダウ工業株30種平均の終値は先週末比632ドル42セント安の2万7500ドル89セント。8月に急上昇した大手IT(情報技術)株を中心に調整売りが強まった。IT株の多いナスダック総合指数は2日に付けた史上最高値からの下落率は10%を超えた。

日本時間で9月4日の夜あたりから、米雇用統計の失業率が予想を下回る→米10年債利回りの急騰(=債券価格の下落)→米株式市場が大暴落……といったニュースが大量に出回っていて、上記の引用記事は、その続報ということになります。

なぜ失業率が予想を下回ると債券価格が下がるのか

この流れを受けて、まずは失業率と利回りの関係を紐解きます。

紐解くにあたり、債券の仕組みや性質について説明します(理解している人は飛ばしてください)。

債券というのは、国や地方などにお金を貸す制度を利用したときに発行される借用証書です。お金を貸しているので当然利息を受け取ることができます。このときの金利や満期日、満期時に返ってくる金額(額面金額)は予め決まっています。そして、この債券はいつでも売買できます。

例えば……

  • 額面金額・・・100万円
  • 金利・・・2%
  • 満期・・・1年後

だったとしましょう。この場合、1年後の満期時に 額面金額100万円×2%=2万円 を受け取れることが確定しています。

仮に、この債券を101万円で購入した場合、1年後に102万円受け取れるので利回りは (102万円ー101万円)÷101万円×100=0.99% になります。
もし、99万円で購入できた場合は (102万円ー99万円)÷99万円×100=3.03% の利回りになります。
このように債券市場には、”購入金額(=債券価格)が下がれば下がるほど利回りが上がる”という性質があります。

こんなパターンも考えてみましょう。例えば、翌月に利率4%の債券が発行された場合、利率2%の債券はどうなるでしょう? 当然魅力が下がり安くで売買されることになります。つまり、”金利が上がれば債券価格が下がる”という性質も持ち合わせています。

10年ものの国債の利率は、住宅ローンをはじめ銀行でのあらゆる融資の利率(金利)に直結します。

今回は失業率の予想を下回る結果でしたが、逆に失業率が上がった場合を考えてみると分かりやすいと思います。失業率が上がるというのは自主的な退職を除いては解雇されたり契約を切られたりすることを意味しています。つまり、会社側としてはリストラせざるを得ないほど資金繰りが苦しかったのです。そんな中、銀行から受ける融資の金利まで上がったら倒産するしかありません。中小企業が倒産しまくるのは国として良くないことです。だから、失業率が上がった場合には金利が下がりやすい=債券価格が上がりやすくなります。今回は失業率が予想を下回ったため、金利が上がった=債券価格が下がった、という結果になりました。

なぜ債券利回りが上がると株価が下がるのか

これは市場の特徴を理解すると簡単です。債券市場はローリスクローリターン、一方で株式市場はハイリスクハイリターンです。債券利回りが良くなれば、投資家たちは「わざわざリスクを取る必要ないよね!」と債券市場にお金を流します。債券利回りが悪くなれば「ただでさえリターンが少ないのに!」とリスクをとってでもリターンを狙いに株式市場へお金を流します。

ここまでのことをまとめるとこんな感じになります。

もっと理論的に知りたい場合は、株価=EPS÷(r+p-g) で計算してみるのもいいかもしれません。

  • EPS・・・1株あたりの利益=会社の利益÷発行株式数:EPSが高ければ高いほど1株当たりの利益が大きい。
  • r・・・長期金利=今回説明した金利が下がると株価が上がるはここの数値を変更してみれば分かります。
  • p・・・リスクプレミアム=「企業がちゃんと成長するか不確実だよね」などのリスク。投資家心理に影響されるため予測が難しいファクター。
  • g・・・EPS成長率=EPSが将来どの程度成長するか年平均で確認したもの。

おわりに

今回は少し難しいと感じた方もいたかと思いますが、「将来投資したい!」「経済のことを知りたい!」と思っている人には最低限必要な知識です。少しでも役に立てたなら幸いです。


執筆者:鍛治田祐子

■ファイナンシャルプランナー

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